糖尿病について

糖尿病は食生活の急激な変化にともなって増加している病気です。
患者の数は日本で二百万人を越えており四十歳以上の約一割が糖尿病という調査報告もあります。
糖尿病はもともと小便に多くのブドウ糖が含まれる人に対してつけられた病名でした。しかし、現在では血液中のブドウ糖の量(血糖値)が一般の人より多い人に対して糖尿病と言う病名が付けられるようになりました。
ではなぜ血糖値が増えてしまうのでしょうか。
糖尿病はインスリンというホルモンが体の中で足りなくなったり、または働きが悪くなり細胞が必要とする栄養素(ブドウ糖)を充分利用できなくなる病気です。
その結果代謝の異常が続き、血液の中の糖分が増えてしまうのです。
病気になってからの期間が長くなるにつれて、主に細い血管の異常(細小血管症)・末梢神経の異常・全身の動脈硬化の促進という合併症が現れます。
具体的には、眼、腎、神経系、心血管系、皮膚などに種々の合併症が現れます。
このうち頻度が高く、糖尿病に独特な合併症である網膜症、腎症、神経障害の三つが三大合併症とよばれます。
また合併症は、正常に近い血糖を維持することにより減少すると考えられています。

糖尿病について、漢方の考え方

東洋医学には現代医学で行われているような血液検査を基準とした薬物の投与という考え方がありません。
(多くの漢方処方が千年以上前に完成しているため。)
そこで糖尿病を漢方薬で治療するには、個人個人が持っている体質と、現在の症状、もし治療(新薬治療も含めて)を行わないとすれば その時に発生するであろう病状を考慮して薬草の種類を選び最も適した処方を選定し1日も早い回復をめざします。

こんな症状のある方ご相談ください。

1

小便に糖がおりているといわれた。最近、のどが乾く。
夜中にも起きて水をのむことがある。疲れやすい。
皮膚がくすんでつやがない。

2

血糖値が高く、食事に気をつけているがなかなかよくならない。
足腰が冷える。のども乾く。目がかすむ。小便の回数も多い。
手足がしびれやすい。黒ずんだ湿疹ができる。
傷やできものがなかなか治らない。かぜも治りくい。

3

筋肉質で大食家。肩がこる。何か食べないと落ちつかない。
血液検査で中性脂肪、コレステロールが多いといわれる。
体重がなかなか減らない。

4

最近体重が急に減った。貧血ぎみで体力もない。手足が冷える。
少し歩くだけで足の調子が悪い。皮膚がくすんで、かゆみがある。
抵抗力がない。神経痛、腰痛を起こしやすい。
膀胱炎を起こすことが多くなった。性欲もない。

よく使用される基本処方

白虎加人参湯・十全大補湯・八味丸・防風通聖散・五苓散・六味丸など

療法

食事療法

食事は日常生活に必要とされている最少のカロリーに制限しましょう。
その範囲で蛋白質、糖質、脂質、ビタミン、ミネラルをバランスよく補給するようにします。
病院などで行われる、糖尿病教室や糖尿病と食事に関する本などを参考にし、養生が行き過ぎないよう気をつけ、徐々に検査値、体調などを見ながら食事療法を日常生活の一部とするように心がけましょう。

必要なカロリー数(事務や家事など軽作業に従事する人の場合)
標準体重(キログラム)×30キロカロリー
※標準体重(キログラム)とは〔身長(センチメートル)-100〕×0.9
  または 22×身長(メートル)×身長(メートル)<BMI>

例えば身長160cmで軽作業をする人では
(160-100)×0.9×30=1,620キロカロリーとなります。
一般に80キロカロリーを1単位として考えるので、この人の場合1日20単位以内の食事にすることが理想的です。
(食生活は計算通りにはいきません、必ず検査値、体調などを見ながら行いましょう。)

運動療法

厳格に食事をひかえても、運動療法を行わなければ血糖をさげるホルモン(インシュリン)がうまく作用しません。 必ず運動療法と食事療法を併用しましょう。
運動量は体力・血圧・心臓の状態により個人差の大きいものです。
但し、おおまかに言って1日合計1時間程度の散歩は必ず心がけるようにしましょう。
(職場、家庭内であちこち歩く程度は運動量に入れない方がよいでしょう。)
もし糖尿病と診断された場合、食事療法と運動療法を自分の体調に合わせて徐々に調整していきましょう。
漢方薬の服用は、代謝を整え、体質を改善するという意味からも、なるべく早く開始したほうが経過がよりよくなります。
また体重のコントロールは必ず心がけましょう。(体重のコントロールが不十分な場合、血糖値が安定していても合併症が発生しやすいというデータもでています。)

その他

食事療法・運動療法・漢方治療でも血糖値が安定しない場合、血糖降下剤を併用します。
血糖降下剤は下記などの副作用があるため使用に関してはかかりつけの医師と十分相談して服用するようにしましょう。

  • 低血糖(血中のブドウ糖が低下した状態で、脱力感・冷や汗・ふるえなどから始まり適切な処置をしないと意識不明となり回復しないこともある重大な症状)を引き起こす
  • 自分自身のインスリンを分泌する能力を低下させる
  • インスリン自体の血糖降下作用を弱くする

現在すでに血糖降下剤を服用している場合、食事療法・運動療法・漢方治療を併用して、同じ薬の量ならよりよい血糖降下・血糖安定を得るように、 やがて血糖降下剤の量を減らしたり、より弱い血糖降下剤に切り替えていけるよう自分のからだを管理していきましょう。

一口メモ

グリコヘモグロビンA1c(HbA1c)
正常値 5.8以下
(グリコヘモグロビンA1cを8以下にすることが重要です)
(この値は参考値にして下さい。正確には検査された医療機関の検査表の基準値をごらん下さい。)
赤血球の中の血色素(ヘモグロビン)に、ブドウ糖(グルコース)が結合したものがグリコヘモグロビンとよばれます。
高血糖が長く続くとグリコヘモグロビンの量も増加してゆくことから、糖尿病時の血糖状態をグリコヘモグロビンによって知ることができます。
グリコヘモグロビンは、赤血球の寿命が約4ケ月くらいということから、過去1~3ケ月間の平均の血糖値を示していると考えられています。
血糖値(空腹時)
正常型 110mg/dl未満
境界型 110~125mg/dl
糖尿病型 126mg/dl以上
(この値は参考値にして下さい。正確には検査された医療機関の検査表の基準値をごらん下さい。) 糖とは血中のブドウ糖(グルコース)のことをいい、異常値には高血糖と低血糖があります。
空腹時の血糖が高い値であれば、それだけで高血糖症と考えてもよいのですが、 なかには、空腹時の血糖は正常でも糖負荷試験(ブドウ糖75gを飲み、その後1時間おきに3回血糖を測定する検査)により異常を示す場合があるので、詳しくは、糖負荷試験で確認します。

専門薬剤師がご相談をお受け致します。

  • まずはお気軽にご相談ください